「も、もちろん覚えてるさ♪ ええと……シエナで会ったんだっけ? それともビスタだったかな?」
実際には彼女の顔は記憶になかったが、リレーションをキープしようといったん保留し、その間に必死に思い出そうと試みる。こんな美人だったら覚えてないはずないんだけどな~。
人魚の女の子は朋也の返事を聞いて渋い顔になった。
「バイバイ♪」
そっけなく手を振ると、身を翻して真っ暗な波間に姿を消す。
朋也は20分くらいその場で粘ってみたが、戻ってくる様子もないので、仕方なくすごすごとホテルに引き返した。
あ~あ、せっかく人魚と懇ろになれる機会にだと思ったのに、失敗しちゃった。それにしても……今の子はイカ族だったのかなあ?? 気になる……。