世界を救うことも、破滅に導くこともできるか……。それがもし本当なら、キマイラなど恐くはないし、エデンを危機から救うのに誰かが犠牲になる必要はなくなるのかもしれない。だが……信じるにはあまりに途方もない話だった。
「悪いけど、やっぱり無理だよ……。ジュディの命がかかってるんだ。明日中にレゴラスへ出発しないと……」
ニーナは少し悲しそうな表情をしたが、やがて頷いた。
「そう……わかったわ。無理強いするつもりはないし。できれば朋也の役に立ちたかったんだけど……あなたは命の恩人だから……」
ニーナはもう一度じっと朋也の顔を見つめた。
「ちゃんと生きて帰ってきてね?」
「うん。ありがとう、ニーナ」
「あっ、あと、蒼玉のことはあなただけの秘密にしておいてね? それじゃ、バイバイ♪」
手を振ると、身を翻して夜の海に引き返していく。
これで、よかったんだよな? 彼女の沈んでいった波間をしばらく見つめてから、朋也は踵を返した。明日の朝目覚めたら、夢だったんじゃないかと思えるような出来事だったな──