獅子の頭の凄まじい咆哮が轟く。朋也でさえも一瞬身をすくめた。
とうとう神獣との話し合いは決裂してしまった。もう、どうすることもできないのか……。反逆者の末裔である自分たちと、エデンの守護者たる彼とは、やはり相容れない存在なのか!?
ちらっとクルル、マーヤ、フィルのほうを振り返る。彼女たち3人はエデンの生粋の住民であり、モノスフィアと直接の関係はない。戦線から離脱したとしても朋也には責められない。しかし、彼女たちはあくまで友人である自分の側に立ち、神獣と矛先を交える覚悟を決めてくれたようだった。すまない、みんな……。
キマイラはさっそくエメラルドのレベルⅢを放ってきた。一行はすかさず防御態勢を敷く。ミオの指示でエメラルドの鉱石を大量にキープしてきたのが役に立った。属性の同じ魔法は吸収効果が高いからだ。それでも、破壊的な威力には違いなかった。
ミオが自身の戦術指揮官としての能力をフル稼働させる。あくまで沈着冷静だ。勝ち目のない戦いは最初から挑まない彼女が1歩も退こうとしないのは、神獣に対して勝算があるという確信があってのことだろう。ジュディも今回ばかりは彼女の指図に不平1つ漏らすことなく、てきぱきと従っている。朋也も彼女を、仲間たちを、そして自分自身を信じることにした。
最も得意とするところのエメラルドが効果的なダメージを与えられないとわかると、ついにキマイラはジェネシスを放ってきた。ミオが素早く指令を出す。これが最後の戦いだ、鉱石が惜しいなんていってられない。
神獣の繰り出す最強魔法は確かに凄まじい威力ではあったが、予想していたほどダメージは受けなかった。カイトの放ったそれと大差ない感じだ。何しろあの身体だ、本来の力の半分も出せてないのかもしれないが。
キマイラは続いてもう1つの奥義を放ってきた。
≪三神呪!!≫
瘴気の渦がパーティーに襲いかかる。攻撃力はジェネシスに劣るが、複合ステータス異常をもたらす全体特殊攻撃なだけに、対処を誤ると命取りになる厄介な技だった。
だが、ここでもミオがあらかじめ耐性確認メモまで付けてマニュアルにきちっと定めていた回復手順が効を奏した。異常の軽度な者が素早くセラピーを行使できるフィルとマーヤのステータスを確認し、速やかにパーティーを回復させる寸法だ。まるで彼女は、この日に備えてキマイラの戦法を徹底的に調べ上げていたかのようだ……。
まったく気の抜けない戦闘だったが、キマイラの手はどうやら尽きてきたらしい。ミオが反転攻勢に出るべく指示を出す。
「神獣召喚! ゴールドベリ!!」
「九生衝ッ!!」
「牙狼二連尖ッ!!」
3人で間髪入れず最強技を繰り出す。これまでに培ってきたスキルの粋を究めた連携攻撃の前では、相手がモンスターなら例外なく完全に粉砕されるはずだった。
先刻から明らかに攻撃の手の鈍っていたキマイラの動きがピタリとやんだ。