「おっ、ジュディ、ご機嫌だな! ほら、ミオも挨拶してごらん?」
ミオを左手に抱えたまま膝をつき、右手で喉元をさすってやる。嬉しそうに目を細める様子はミオと少しも変わらない。ジュディは続いてミオに挨拶しようと鼻を突き出してきた。と、ミオは虫の居所が悪かったんだか、彼女の鼻っ柱を軽く引っぱたいた。ジュディは悲しそうに「キュン」と鳴いて一歩下がった。
いつもはこんなことないんだがな? 実際、二匹は同い年のお隣さんだけあって、部外者のイヌやネコと違い警戒心や敵愾心はお互いこれっぽっちも抱いていなかった。最近の飼い主同士よりよっぽど仲はいいかもしれない。今はたまたまミオが不機嫌だったんだろう。なにせジュディにとっては、親元を出されてからニンゲン以外で出会った「最初の友達」がミオだったのだ。
そういえば……朋也は思い出した。あの時も今とまったく同じやりとりだったっけなあ。身体のサイズはミオは今の半分、ジュディに至っては四分の一もなかったけど。
「こら、その不良娘をちゃんとしつけなさいよっ! ジュディ、おいで」
千里がジュディを呼び寄せる。
「ただの軽いネコパンチじゃないか。それに、当人(犬・猫)たちの問題に介入するのはスジ違いってもんだぞ? ジュディの息が臭かったんだろ」
「あんたの教育が悪い所為に決まってるでしょっ!?」
「イヌと一緒にすんなっつーの。ネコは温かい目で見守るのが大事なのっ! 教育といや、綱を外して脱け出してくるのはマズイんじゃないのか? 家の中や草っ原ならともかく」
「ムム……試験でここんとこかまってあげる時間がなかったんだもの! 少しくらい大目に見てくれたっていいでしょ!?」
二人してにらみ合う。まあジュディも、千里の声がするのにいつまでも家に向かってくる気配がなかったからしびれを切らしたんだろうが。
「ああ、かわいそうなジュディ。朋也のネコにいぢめられて……。それでも、自分より小さい相手にはやり返さないところが健気よね~。ジュディの方がミオちゃんよりずぅーっとカワイイわっ♥」
ムム、これは聞き捨てならぬ台詞だ。何か反論せねばっ! ミオだって──