「ええい、こいつ、千里の子分の分際で馴れ馴れしいぞっ! しっしっ」
しまった、無視するつもりで声をかけてしまった。何を勘違いしたんだか、ジュディは尻尾を振ってこっちにやってくる。彼女はミオと違ってほんとに勘が鈍い。
と思ってたら、ミオも朋也の腕に抱かれながら身を乗り出し、二匹で鼻を突き合わせて挨拶していた。
実際、二匹は同い年のお隣さんだけあって、部外者のイヌやネコと違い警戒心や敵愾心はお互いこれっぽっちも抱いていなかった。ジュディにとっては、親元を出されてからニンゲン以外で出会った「最初の友達」がミオだったのだ。最近の飼い主同士よりよっぽど仲はいいかもしれない。
「おお~い、ミオ~。わざわざ千里のやつにポイント稼がせるなよ~」
心得たとばかり、ミオはおもむろにジュディの鼻っ柱に軽くジャブをお見舞いした。ジュディは悲しそうに「キュン」と一声鳴いて後ずさった。
そういえば……朋也は思い出した。初対面の時も今とまったく同じやりとりだったっけなあ。身体のサイズはミオは今の半分、ジュディに至っては四分の一もなかったけど。
「こら、その不良娘をちゃんとしつけなさいよっ! ジュディ、おいで」
千里がジュディを呼び寄せる。
「ただの軽いネコパンチじゃないか。それに、当人(犬・猫)たちの問題に介入するのはスジ違いってもんだぞ? ジュディの息が臭かったんだろ」
「あんたの教育が悪い所為に決まってるでしょっ!?」
「イヌと一緒にすんなっつーの。ネコは温かい目で見守るのが大事なのっ! 教育といや、綱を外して脱け出してくるのはマズイんじゃないのか? 家の中や草っ原ならともかく」
「ムム……試験でここんとこかまってあげる時間がなかったんだもの! 少しくらい大目に見てくれたっていいでしょ!?」
二人してにらみ合う。まあジュディも、千里の声がするのにいつまでも家に向かってくる気配がなかったからしびれを切らしたんだろうが。
「ああ、かわいそうなジュディ。朋也のネコにいぢめられて……。それでも、自分より小さい相手にはやり返さないところが健気よね~。ジュディの方がミオちゃんよりずぅーっとカワイイわっ♥」
ムム、これは聞き捨てならぬ台詞だ。何か反論せねばっ! ミオだって──