「どうする？」
「とりあえずお昼にしようよ♪」
この状況で食事にするのか？ クルルは気楽でいいな──と思っていたら、ミオと千里もあっさり同意した。
「そうね」
「ジタバタしても始まらないし、ここはクルルちゃんの言うとおりお弁当にしましょ？ お腹が膨れればいいアイディアも浮かぶかもしれないし」
結局、女３人に押し切られてしまう。我ながら情けないリーダーだ……。
一行は少し先に進んで、モンスターの不意打ちを受けない開けた場所を探した。朋也は準備が済むまで付近を少し探索してから、車座になって腰かける３人のもとに戻ってきた。みな自分用の包みを開きかけたところだった。
「朋也は？」
千里がそっけなく訊く。
「え？ 持ってきてないけど……」
そうか、基本的にセルフサービスというのがみんなの了解事項だったっけ……。昼飯のことまで気が回らなかった。甘えて他の女の子たちをアテにしてた自分が悪いんだけど。
「まあ俺はクルルのビスケットでもいいや……」
「でもぉ！？」
クルルが目を吊り上げてこっちを見た。
「あ、いや……クルルのビスケットがぜひ食べたいと思ってたんだ」
慌てて言い直す。
「クフフ♪ でも、このビスケットは保存食だからね。今日のお昼の分は、簡単だけどみんな用意してきたんだよ。千里におにぎりの作り方教えてもらったんだ♪ 朋也の分だったら──」
「こんなことだろうと思って──」
「あたいが持ってきてあげたわよ」
３人はほとんど同時に包みの中を朋也に差し出した。交錯した視線がスパークする。みんな示し合わせたように自分の分２個、朋也の分２個、計４個のおにぎりがラップに巻いてある……。
「……。頑張っていただきます」
とはいえ、さすがにいっぺんに６つも食べたら胃袋がはち切れてしまう。自分の面倒くらい自分で見なきゃバチが当たるってことかな？
「いくらなんでも、これ全部食べたんじゃお腹壊すよね……。恨みっこなしで好きなの選んでちょうだい」
千里がため息を吐いて言った。
「あたいは恨むよ」
「ミオちゃんっ！」
「えっと～……中味は？」
とりあえず、３人になるべく不公平感を与えないよう、純粋にメニューに基づいて判断を下すことにする。
判明した具の内容は以下のとおり。(注)
クルルの分はキャベツのザワークラウトとピクルス。彼女自身の好物だ。見てくれはいかにも若葉マークだったが。千里の分は梅干と昆布。神殿の物資の中から見つけてきたのか？ よくそんなもんあったな。外見は如何にもおにぎりらしい出来具合だ。ミオのは周りがカツブシご飯で中の具にシャケとタラコ。小粒だが形は整っている。エデンではこのカツオ節も含め水産物も妖精の作ったコピー食品だった。クロレラに似た海産の藍藻を使っているという話だが、酵母の人工肉より上出来で風味はほとんど本物と変わらず、好き嫌いの激しい彼女も合格点を出したくらいだ。
さて、誰のおにぎりを選ぼう？？
(注）：パーティーメンバーがジュディのときは「クルルのビスケット」が入っている。
