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16 神殿の一夜




 まるで何事も起こらなかったかのように静かな夜だった。神鳥が一時的に復活したためなのか、モンスターたちも影を潜め、地上に戻るまで1匹も出くわさなかった。月蝕が終わり、さっきまで怪しい血の色を帯びていた満月も、今はいつもと変わらぬ穏やかな光を地上に投げかけている。
 朋也は神殿の入口の石段に腰かけ、月を仰ぎ見ながらため息を吐いた。
「はぁ……。何だかいっぺんにいろんなことがありすぎたな……」
 あれから、朋也はブブたち3人に状況を伝えに行き、皆でベスとトラを丁重に葬った。驚いたことに、息を引き取った後の彼らの亡骸は前駆形態に戻っていた。2人がモノスフィアで生を受けたからなんだろうが……。
 3人の弟分たちは、彼を殺した事件の首謀者と一緒にトラを葬ることに反対しなかった。トラと大勢のウサギ族を殺したベスの行為は許せるものではなかったが、計画が無惨な失敗に終わったいま、野心の虜となるまでベスを追い詰めた彼の胸の内の苦しみを、トラならきっとわかってくれるだろうと、3人とも納得してくれた。方向は違ったが、再建されたオルドロイ神殿は2人が望みを託して取り組んだ一大事業の成果だし、何より2人はこの異世界で故郷を同じくする数少ない間柄なのだから……。
 もう時計の針は深夜の〇時を回っていたが、眠気はさっぱり起きなかった。いろんな思いが頭の中を駆けめぐる。
 亡くなった2人のこと……エデンに来てから起こった様々なこと……そして、共に行動してきた仲間たちのこと……。学校の友人や両親や、向こうの世界のことも思い浮かんだが、エデンで過ごした1週間の強烈な印象の前では薄れ気味だった。
 今は誰も彼のそばにいない。みんながどこにいるかはわからなかった。マーヤはフェニックスがマグマの湖に身を投じた時に儀式の間を飛び出したきりだし、ミオの姿も見えなかった。彼女の場合はいつものことだけど……。他の3人は、皆で神殿の裏手に亡くなった2人を埋葬した時にはまだそこにいたが……。
 いたたまれずに外の空気を吸いに来たけれど、朋也はにわかにみんなのことが心配になりだした。誰にとっても辛い経験だった……。クルルは大勢の村人をいっぺんに失ってひどく落ち込んでるし……マーヤはフェニックスがあんな状態で相当ショックを受けてるし……ミオは友人のトラが目の前で死んで……千里とジュディはやっと再会できたけど、やっぱりベスがあんな死に方をして……大丈夫かな?


誰のところへ行く?
*選択肢    ミオ    千里    ジュディ    マーヤ    クルル    行かない (注)

(注):それぞれエンディングフラグ。


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